平成9年秋、「若松さん、美味い刺身を食べに行かないか、サザエとかアワビとか、ウニなんか絶品だよー」このたった1本の電話が、私を岩手県気仙地方へ5年間も通わせることになった。電話の主は内田紙工業(株)(埼玉県、内田和行社長、電話048−422−4600)の内田和行社長である。続いて「海の近くだからさ、ちょっと日焼けしてるけど気の良いママさんがいるスナックもあるし、カラオケもいいのが入ってるよ」。トドメは「港ではたくさん魚が釣れてるよ」。
是でもかとばかりに私の弱みを突き、その気にさせた。気が付いたときには、「何時行くの、何処に何時に行けば良いの」と答えてしまっていた。行き先は、出発の前日になってから岩手県大船渡市と解った。最寄の駅は、東北新幹線の水沢江刺駅である。あまり聞いた事の無い駅名だが、とりあえず安売りチケット屋に行った。行って驚いた、売っていないのである。それだけ乗降客が少ない駅のようだ。時刻表を調べたら仙台の先で裕に3時間はかかるし、そこから車で1時間半かかると言う。えらく遠い所だし、遊びだけに行く訳が無いので詳細を聞くと「通販を勉強したいグループがあるから、ちょっと教えてあげてよ」ときた。
まんまと内田社長に乗せられてしまったようだが、いまさら後には引けないのでともかく行く事にした。水沢江刺駅には、にこにこ顔の、人柄の良さそうな青年が車で迎えに来ていた。この青年がグループ・サンサックスのリーダーで(有)大船渡印刷(大船渡市、熊谷雅也社長、0192−26−3334)の熊谷雅也社長であった。グループ・サンサックスとは、SANriku SAnnpinn Kaihatsu System(三陸産品開発システム)の頭文字をとったもので、気仙地方の有志企業、とりわけ若手経営者たちのグループである。初対面の挨拶をし車に乗るべく駅の外に出たら、おみやげ屋が1軒と喫茶店が1軒あるだけで、あとはなんにも無い駅である。なんにも無い所に駅を造ったというのが正解で、いかにも政治家が自己PRのために造ったような駅である。車中で熊谷社長から今回の事情を聞いた。
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